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城に戻ったフィデルは、アインスを部屋へ連れて行くとそのままケーニッヒの元へ向かった。
「ケーニッヒ様。ただいま、戻りました」
「ああ。……少し、遅い帰りだったな。どこか寄り道でも?」
ケーニッヒがそう尋ねると、フィデルは躊躇いに口ごもった。
「………」
「また隠し事か、」
「お時間を戴けませんでしょうか。今夜、…ケーニッヒ様にお伺いしたいことが幾つか」
「…珍しいな。お前から伽を申し出るとは」
う、と言葉に詰まりながらも、フィデルは軽く跪き頭を下げた。
「今夜に説明があるなら構わぬ。ルビーン…アインスは?」
「部屋にお連れいたしました。ご満足くださったようです」
「そうか」
跪いたままのフィデルに、一歩一歩近づく。甲高い靴音が止まると、ケーニッヒはその胸倉を掴み上げ乱暴に口付けた。
「では。夜に」
吐き捨てるように言ったケーニッヒは、そのまま部屋を後にした。暫くじっと俯いていたフィデルは、そっと立ち上がると、静かに部屋を出た。



夜。寝室を尋ねたフィデルは、何度か逡巡してから扉をノックした。
「失礼します」
既にワインを半分程空けていたケーニッヒは、フィデルの訪れを見ると至極不機嫌そうに眉を狭めた。
「秘密を口にする覚悟は出来たのか?」
扉の前に立ったまま、フィデルが小さく口ごもった。
「いい加減、私の寄せた信を裏切るつもりか」
「……いえ。…主を思う故の秘匿や嘘も、あるのです」





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