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54 心変わり



「………何ですって…?」
聞き返すフィデルに、しゃくりあげながらも必死に繰り返す女性。アインスはそれを聞きながら、その表情をだんだんと強ばらせていった。
「……母、上…?」
「ルビーン様、」
「ルビーン!あなたの名前、ルビーンと言うのね!ああ、やっと知ることが出来た…!」
女性はそう言うとそのまま、わっとその場に泣き崩れた。



暫くして泣き止んだ女性の導くまま、二人は彼女の住む家へ訪れていた。
「先程は、失礼致しました…貴方のお噂は、少しながら聞いております」
ベゾンダと名乗った女性は、フィデルとアインスに椅子を勧めると自らも腰を掛けた。
「フィデル様、王城に勤める素晴らしいお方だと」
「ありがとうございます……ベゾンダさん。それで、…あなたが先程仰ったことは」
「嘘でも、妄言でもありません。私はきっと、その子の母親です」
「……何故、それが」
「私は国王の妻でした。いえ、今なおケーニッヒ様の妻です」
「………父上の?」
アインスが口を開く。ベゾンダは愛おしさと悲しみで瞳を満たし、そうよ、と頷いた。
「三人目の子供が産まれるまで、私は城にいました。…その後すぐ、城を追われ……だから、あなたが覚えていないのも無理はないわ。自分で産んだ子の名前も知らないんだもの」
「何故、城を追われたのですか」
「……国王様は、女をひどく嫌っているのです。だから、後継ぎの為に子供が出来ればそれで十分…そういうことらしいのです」





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あきゅろす。
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