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それから暫く経ったある日。フィデルの部屋に、再びドライが訪れていた。
「ああ、レーゲン様……おや」
「フィデル!」
「……アインス様、いえ…ルビーン様まで?」
その後ろに立ち尽くすアインスの姿を見つけると、フィデルは不思議そうにその顔を見つめた。
「何のご用でしょうか」
「フィデル。連れて行ってほしい場所がある」
「……私に?」
「花を、」
後ろ手に持っていた一輪の花を、フィデルに見せるアインス。
「ズィルバーに、あげたい」
「……ルビーン様……」
「いいでしょ?」
尋ねるアインスの表情に、フィデルは一つ頷いた。
「分かりました。ですが、先ずケーニッヒ様に許可を」
それを聞くと、途端にアインスは不安げにフィデルを見上げた。
「…どうして…?」
「それは、」
「兄ちゃんが王子だから?」
ドライが間に入る。アインスは心配そうに、その様子を見ていた。
「違いますよ、レーゲン様。あなた様は前にケーニッヒ様より外出の許可を貰っていますが、ルビーン様はまだではありませんか」
「…だって、兄ちゃんはダメかもしれない」
「レーゲン。駄目で元々だよ、さっきそう言ったじゃないか」
「でも!」
「ルビーン様。私と共に、ケーニッヒ様のところへ行きましょう。話をしてみます」
椅子から立ち上がると、フィデルは目を見開くアインスへと歩み寄った。
「…お二人が案じているのと同じように、ケーニッヒ様もまた自分やあなた達の地位について考え悩んでいらっしゃるのですよ」
「……フィデル…」
「ぼくは行っちゃだめ?」
「…いくら私が護衛に付くとはいえ、お二人を同時にお守りするのは厳しく…。申し訳ありませんが、本日はルビーン様だけで」
「いいよ!兄ちゃんが行けるなら!」
「…ありがとうございます。さあ、行きましょう」
言いながら、アインスの手を取る。一旦ドライを部屋へ戻したフィデル達は、ケーニッヒの元へ向かった。





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あきゅろす。
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