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「いつからレーゲンと呼ぶように?」
その夜、寝室の小さなテーブルにボトルが一つ。ケーニッヒは心なしかゆっくりとワインを嗜みながら、傍らのフィデルへ問うた。
「今日、レーゲン様ご本人より…そう呼べと、仰せがありましたので」
「ルビーンのこともか」
「はい」
両手でグラスを持ち、半分以下の赤紫を持て余すフィデル。
「…しかし何故、レーゲンはお前を…?奴が誰かを連れて行ったのは、初めてのはずだ」
「…それは、私にも」
「………」
「私からも一つ、よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「何故、ケーニッヒ様はレーゲン様を…いえ、私をお赦しになったのですか」
ぴたり、グラスを傾けていたケーニッヒの手が止まる。
「万が一にもレーゲン様に何かがあれば、ただ事では済まなかったでしょうに」
「……お前は、どうするつもりだった?」
「…私は…万が一なぞがあり得ぬよう、命に代えてもレーゲン様をお守りするつもりでした」
「私はそれを信じたまでだ」
そう言って、グラスに残っていたワインを呷る。フィデルは目を見開いて、そんなケーニッヒを見つめた。
「……“信じた”のですか?」
「ああ。………覚えていないか」
「え?」
「昔、私も同じような経験をした。勝手に独りで外へ出て、危うく危険な目に遭うところだった」
すかさずボトルを取り、ケーニッヒの差し出したグラスへワインを注ぐフィデル。
「レーゲンが初めて城を抜け出した時、それを思い出した。引き留めてしまえば、私と同じ思いを抱く……それは嫌だった。だから護衛をつけるだけにした」
ワインに映る自分を見つめながら、ケーニッヒはどこか自嘲気味に笑った。





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あきゅろす。
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