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え、という二人の声が重なる。重い溜め息を吐いたケーニッヒは、戸惑うドライの前に歩み寄った。
「逆に聞く。お前は、“一人で”外出をしている時、誰かの気配に気づかなかったか」
「……え…」
「衛兵に軽装をさせ、短剣のみを持たせた姿で護衛をさせていた。お前が裏門をくぐったら、こっそり追うように指示をしてな」
ドライの頭に手を乗せ、優しく髪を撫でる。傍らのフィデルの表情からは、緊張が消えていた。
「何かあっては一大事だ。城の外へ行きたいなら、必ず誰か家臣を同行させなさい」
「………じゃあ、」
「フィデル。今夜の伽と、その前に杯を交わすことがお前への罰だ。忘れぬように」
ケーニッヒがそう言うと、フィデルは途端に表情を引きつらせた。罰という言葉に、不安に二人の顔を見上げるドライ。
「とぎ…とぎ、ってなに?フィデル」
「ああ……ええ、と……お、遅くまでっ、仕事をするという意味ですよ、レーゲン様」
「仕事…?罰なら、痛かったりしないの?」
「……い…、あまり、痛くはない…でしょうか、ね……」
フィデルが言い淀みながらちらりとケーニッヒを見やれば、彼は高みの見物とばかりにただ不敵に笑んでいた。
「………全ては、ケーニッヒ様次第です」
「そうなの…?お父様、あんまり痛くしないであげてね」
「ああ…考えておこう」
フフ、と含み笑いをしたケーニッヒは、ドライに部屋へ行くよう促す。駆けていったドライが扉の向こうへ消えると、フィデルの方を振り返りニヤリと笑った。
「さて。今夜の遅い仕事では、今日のことを具に聞かせてもらわねばな」
「……畏まりました…」
ただただ悪戯っぽいケーニッヒの微笑に、フィデルは困ったように眉間を狭めるしかなかった。





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あきゅろす。
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