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「ああ、フィデル様!こんにちは!」
遺民街の人間は、フィデルの姿を見つけるなり一様に頭を下げた。その様子を見て、ドライがポカンと口を開ける。
「ふーん…やっぱりフィデル、すごいなあ」
「……フィデル様?そちらの子供は」
一人が尋ねると、フィデルはドライと顔を見合わせ苦笑した。
「こちらは、ドライ様……いえ、レーゲン様。国王の第三子様です」
ざわ、とその場にいた人々が驚きの声を上げる。
「え、…国王の…!?」
「何故、そんなお方がここに?」
「レーゲン様御自身の希望で…私に、この街を案内して欲しいそうです」
「よろしく!」
ドライの言葉に、戸惑いながらも頭を下げる人々。
「ではレーゲン様。どちらへ参りましょうか」
「フィデルに任せる」
「…畏まりました。では…皆さん、今日はレーゲン様を歓迎していただきたいのですが」
人々は顔を見合わせ、暫し躊躇いながらも、フィデルに向き直るとしっかと頷いてみせた。
「ええ。フィデル様のお言葉ならば、喜んで承ります」
「ふふ…ありがとうございます、皆さん」
さあ、とドライを促すと、フィデルは人々の案内に従って歩き始めた。



街を隅々まで回った頃。広場で休む二人を、そこで遊んでいた遺民街の子供達が遠巻きに眺めていた。
「……なんか、見られてる」
「城の要人がこの街にやって来るのは、珍しいですからね」
彼らの中には、近づこうか悩む子供や諦めて遊びを再開した子供もいた。
「いいなあ。ぼくも友達と遊んでみたい」
「…ルビーンお兄様とは」
「無理だよ。兄ちゃんは忙しい」
「………わかりました」
突如立ち上がったフィデルは、ドライを連れて子供の塊の一つに歩み寄った。





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