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43 父と息子



いつものように政務をこなすフィデルの元に、その日は珍しい客人が現れた。
「……ドライ様?」
机の縁からひょっこり顔を出したドライが、幼い瞳でフィデルを見上げる。見れば、部屋の扉は子供っぽく開け放たれていた。
「何か、ご用でしょうか…?」
「フィデル、ぼく外に行きたい」
「………外?」
くいくいと袖を引くドライ。フィデルが立ち上がり腰を屈めると、嬉しそうににっこりと笑った。
「ルビーン兄ちゃんが教えてくれた。フィデルなら良い人だから、きっと叶えてくれるって」
「……しかし、ひとまずケーニッヒ様に」
「だめ!お父様には言っちゃだめ」
「…ドライ様」
「レーゲンって呼んで、兄ちゃんはルビーン」
茶褐色の丸い瞳が、フィデルをじっと見つめる。言葉に詰まったフィデルは、咳払いを一つすると屈めていた体を伸ばした。
「……レーゲン様。あなたに何かあっては、私はケーニッヒ様に顔向けが出来ません」
「大丈夫だよ」
打って変わって、暗い声。フィデルはドライの表情を見て目を丸くした。
「ぼくは兄ちゃんと違って、王子じゃないもん。だから何かあっても大丈夫」
「………」
「だから、ね!行こう!」
ぐ、とフィデルの腕を引くドライ。抗うことを忘れ、フィデルはその足取りに従った。



「今日はどこに行こうかなー」
フィデルの腕を引いたまま、ドライはそう言って城の裏門をくぐった。
「…今日は?」
「そう。いつもは独りで出掛けてるの」
「……レーゲン様」
「大丈夫だって。一回も危ない目に遭ったことなんてないよ」
ドライの言葉に、複雑な面持ちになるフィデル。
「そうだ、今日は南西の外れの街に行ってみたいな!フィデル、あそこの人とは仲良しでしょ?」
「え……ああ、遺民街のことでしょうか」
「そう!さ、行こう!」





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