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98 不協和音



カルテ国内で、ある噂がまことしやかに流れていた。
それは、海を隔てた隣国「ナチュレ」との条約が破棄されたことに端を発する、戦争の予感。

城内ではしばしば、今後のナチュレ国との関係について会議が重ねられた。海沿いの街には早々に戦の準備を始める者も現れ、カルテ全土に不穏な雰囲気が漂っていた。
「……問題は、ナチュレ国の軍事力です」
幾度目かの会議、グリューネの発言に皆一様に表情を曇らせた。
「最近の調べでは、また新型の軍艦を開発したとのこと……」
「唯でさえ恐ろしいナチュレ国の海軍が、更に力を増したと」
「…やはり、ナチュレは我々との戦争を企んでいるのか…」
「ケーニッヒ様」
重臣達がざわめく中、ブラウが静かに声を上げた。
「なんだ」
「隣国の武器は海軍の力のみ。このまま行けば戦争は必定。ならば敵が海を渡る前に、此方が陸へ上がり敵地を攻めれば良いのです」
「しかし敵には、我が国に対する諜報の術があります」
重い声でそう切り返したのはファルベであった。全員の驚きの目を受け、テーブルに置かれた資料を手に取る。
「ナチュレとの国境…コボルト海沿岸の海賊について、調査を進めていましたが……ナチュレ国女王の側近との、取引があるようです」
淡々と説明するファルベが、ふとケーニッヒへ目を向ける。微かに口角を上げたケーニッヒは、一つ咳払いをすると僅かに身を乗り出した。





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あきゅろす。
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