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翌朝。痛む体に鞭打って政務をこなすフィデル。心なしか弱っているその様子に、ケーニッヒはふと気づいた。
「フィデル。具合でも悪いのか」
「…!」
憂鬱そうな表情を慌てて隠したフィデルは、いえ、と首を振った。
「そのようなことは」
「……そうか」
怪訝そうに頷いたケーニッヒは、そのまま廊下を進んでいく。その後ろ姿を見送り、フィデルは安堵の溜め息を吐いた。
「……今夜は、大丈夫だろうか…」
自室へ戻ると、自らが片付けた寝具が目に入る。昨晩のことを思い出し、不意に背筋に悪寒が走った。
「…………何故、あんなことを…」
押し殺したような溜め息が漏れる。テーブルに書類を置けば、ズキンと響く腰の痛みに顔をしかめた。



「…失礼します」
ケーニッヒの寝室へ訪れる。寝室前で待っていたのがグリューネ…つまり、昨晩の蛮行に及ばなかった一人…であったことが、唯一の助けであった。
「やはり、今日のお前は様子がおかしい」
「え?」
開口一番、そう言ったケーニッヒはフィデルを抱き寄せ。体格差の故にすっぽりと腕へ収まったフィデルを、どこか案じるように見下ろした。
「何か悪い物を食べたか、体を冷やしたか」
暫しケーニッヒを見上げていたフィデルは、口を開こうとして表情を歪め、そのまま俯いた。
「……いえ。大丈夫です」
「私に嘘を吐くのか?」
「…………」
「……そうか。わかった」
フィデルの体を寝台へ横たえると、自分はそこを降り離れた。不思議そうにその様子を見ていたフィデルは、何やらを探していたケーニッヒが戻ってくるのを見て、小さく悲鳴をあげた。
「本当は私の腕だけでも、十分なのだがな」
鉄でできた枷を、恐怖に竦んだフィデルの右手首に嵌める。寝台の柵に鎖を通したところで、フィデルは声をあげた。
「ケーニッヒ様、ッ」
「なんだ」
「……いったい、何を」
「…素直になる魔術だ」
苦々しく笑み、ケーニッヒは柵に絡めた枷の他方をフィデルの左手首に嵌めた。





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