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「………ぐ、ッ!」
呼吸を整えていたフィデルを、強い痛みが襲う。それが固く握られたケーニッヒの拳だと気づいた時には、次なる痛みが体を蝕んでいた。
「い、…が、あァ!っう、…ぐぅ、あ…ぁあッ!ひ、あぁ…!い、ぎ…っあ、ぅ……か、はァ、ッ」
無言のまま、フィデルの顔体を問わず拳を振るう。とっさに顔面は庇ったものの、容赦のない暴力に意識が遠退いていくのがわかった。
フィデルの意識が限界を迎える手前、意図してか、ケーニッヒの手が止まった。
「…はァ、……っ、はあ……ぅ、あ…ハ、っ…」
「………もう一度聞く」
「…はぁ、ッ…我が、祖国、はッ…パルフェ、のみ、で…す……っ」
「…………」
それを聞くなり、固く口を結ぶケーニッヒ。肩で息をしながら、フィデルはその様子を見つめ返した。
やおらフィデルの寝装に手を伸ばし、乱暴にそれを剥いた。されるがままのフィデルに、刹那眉を顰める。
側に置いていた小瓶を引ったくるように取り、薄く開いたフィデルの口にねじ込んだ。息苦しさに顔をしかめながら、しかし逆らうことなく、その液体を飲み下すフィデル。
「………お前は、私が嫌いか」
黙ったまま、ケーニッヒを見上げるフィデル。その瞳に、初めて恐怖の色が滲んだ。
「殺しはしない。本当のことを言え」
「……いいえ…嫌い、では…ありません…」
「憎んでいるのにか?」
「……憎しみと共に…あるのは、哀れみ…です……何故私に、拘らねば…ならな…い……の、…か………」
重くなったフィデルの瞼が閉じる。深い眠りに落ちたことを確認すると、ケーニッヒはその髪を指で優しく梳いた。
「………フィデル」
唇を重ね、深い口づけをする。息苦しさに顔を歪めることもなく、淫靡な水音だけが返ってきた。
人形のように眠るフィデルを腕に抱く。撓垂れる体躯に、そっと顔を埋めた。
「……私は、…お前の全てが欲しい」
独り言つ声は、ただ広い部屋に消えていった。





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あきゅろす。
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