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消え入るようなケーニッヒの呟きに、一同は言葉を止めた。
「自分を守るために、不安を取り除くのは咎められることじゃないって……人として、間違ったことじゃないって……」
「………せめて、…せめて私にも、彼女と共に罰をお与えください……!どうかこの身を、彼女と同じ刑に処してください…!国王様を危険に晒した罪ならば、私も同じく償うべきです!」
「ケーニッヒ様、このままでは埒が明きません。こうしては如何でしょう?」
ファルベの言葉を遮り、ゴルトがそう口を切る。ケーニッヒの視線が自分へ移ったのを見て、ゴルトは卦体そうに腕を組んだ。
「彼に刑を執行させるのです。ちょうど、……そういったことには手慣れているでしょう?先刻も申し上げました通り、重罪を厳罰で懲らしめることは、次の過ちの抑止力となるのですから」
ゴルトが答えを促すようにケーニッヒを見る。暫し、重苦しい空気が流れた。
「……それが、国王の、仕事なのか」
ぽつり、虚ろな声で聞き返す。深く頷いたゴルトが、支度を、と扉に向かって歩き出す。扉に手をかけ、もう一度玉座の方を振り返り。
「ケーニッヒ様。……この国と民を治めることこそが、国王様の責務です」



長い長い沈黙が続く。眩暈のしそうな感覚を堪え、ケーニッヒは玉座から立ち上がった。
「……………」
微動だにしないファルベに、一歩ずつ近づく。数歩手前で、ぴたりと足が止まる。
殺されるかもしれない。そんな予感が頭を過った。
「…………あ、」
微かに顔を上げた、ファルベの表情が垣間見えた。そこから、感情は読み取れなかった。
「…………っ、」

ケーニッヒは逃げるように部屋を飛び出した。背中を押すのは、心を満たす恐怖だけであった。





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あきゅろす。
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