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「なるほどあなた様は、少々慈悲深さに過ぎるのやも知れませんな」
玉座に座したまま虚ろな目をしているケーニッヒへ、ゴルトがそう言って聞かせる。ややもすれば倒れてしまいそうな危うい雰囲気に、心配と怪訝の表情を浮かべながら。
「しかしケーニッヒ様。行き過ぎた慈悲は国事には不要ですぞ。相手は、あなた様の命を狙った反逆者です」
「……処刑の場に庶民を呼ぶつもりか」
「いえ。そんなことを為さらずとも、噂とは羽の生えた生き物です……愚かな反抗心を抱く者達にも、自然と広まっていくでしょう」
その時、王の間の扉が大きな音を立てて開かれた。
「国王、様……!」
悲鳴のような声を上げて、ファルベがケーニッヒの前に進み出る。額にひどい汗を掻きながら、左の脇腹を庇うように跪いた。
「……ファルベ?」
「お願い致します……!彼女の罪をどうか、お赦しください……!」
地に頭を擦り付けて平伏するファルベの姿に、ケーニッヒは酷く狼狽した。
「え、…」
「国王様の前だ、無礼な真似は止さないか」
「お願い致します!あれは…あれは、全て私のせいなのです!」
後を追ってきていたグリューネが、王の間に入るなりその異様な空気を感じて足を止めた。化け物を見るような目で、ファルベをじっと見つめるケーニッヒ。
「……どういう、意味」
「あの者は、故郷に置いてきた私の許嫁です…!私が言伝もせず郷を出たばかりに、不幸な勘違いをしただけなのです!彼女の罪は私の罪です、どうか、その償いは私に!」
「黙れ!それ以上ケーニッヒ様に盾つけば、この場で貴様を叩き斬」
「だって、お前が言ったんじゃないか」





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