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「……け…怪我の状態は、どうだね」
気も漫ろなようすで、ズィルバーがそう尋ねた。ずきずきと痛むのを堪えどうにか頷いてみせる。
「そうか。……」
「……あの」
「君に、伝えねばならないことがある。先だて、国王様に刃を向けたあの少女を、処刑することになった」
一息にそう告げる。それからシンとした空気の中で恐る恐る顔を上げたズィルバーは、しかしそれを見て背筋の凍る思いがした。
「…………」
彼をじっと見つめるファルベの表情は、少しも変わっていなかった。
「……あの子は、君の…」
言いかけて、唾を飲み込む。これ以上の言葉は必要ないのだと覚った。
「………ゆっくり、傷を癒してくれ」
絞り出すようにそう言ったズィルバーは、震えてしまいそうな脚に力を込め、部屋を後にした。
部屋の外で扉に寄りかかっていたグリューネが、出てきたズィルバーを不安げに見上げる。
「……ズィルバーさん」
「グリューネ、……悪いが少し、休ませてくれないか。具合が悪いんだ」
そう言って、蒼い顔のズィルバーが急ぎ足に去って行き。その姿を見送った後、グリューネは意を決して部屋の中へと入った。
ベッドの上でじっとしたまま動かないファルベを認めると、グリューネは手の中の物を強く握り締め。
「……ファルベ、さん」
少しの間を空けて、ファルベがゆっくりと顔を向けた。掠れたような声で、なんでしょう、と返される。
「これ……落ちてたって、ズィルバーさんが」
静かに手を伸ばして受け取る。その時初めて、グリューネは彼の唇に血が滲んでいることに気付いた。
手の中には木製の指輪。包の中にある物と同じ、小さな手彫りのもの。
「…………」
グリューネが次の言葉を発する前に、ファルベは部屋を飛び出していた。





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