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「ケーニッヒさま!」
話を聞きつけたグリューネが、一目散にケーニッヒの部屋へ向かう。部屋の隅に座り込んでいるケーニッヒへ歩み寄り、その傍らのズィルバーを見上げた。
「ズィルバーさん、いったい、」
「…一人の刺客が、城に侵入していたらしい。ケーニッヒ様を狙って襲いかかってきたところを、傍にいたファルベが庇ったんだ」
「……ケガ、は」
「ケーニッヒ様はご無事だが、ファルベが脇腹に深い傷を負っていた。小さなナイフが深く刺さったようだ。気を失っていたから、手当をして部屋に寝かせている。……ただ、」
そこまで言うと、ズィルバーは急に語気を弱めた。
「…相手が娘一人だというのに、傍にいながら私には抵抗できなかった。妙に身体能力が高いと思っていたが、その……」
「……?」
その続きを言い淀むズィルバー。グリューネが不安げに見上げていると、ケーニッヒがゆっくりと顔を上げた。
「……ズィルバー……」
「は、はい、ケーニッヒ様」
「……ファルベの奴は、無事なのか……」
「……ええ。怪我は、恐らく」
「…………なら、」



左の脇腹の疼痛で目を覚ました。長い間、眠っていたような気がした。
体を起こそうとして動く度に走る、熱を持った痛みに顔を顰めた。
「……う、……」
痛い、という感情が頭を満たす。自分の部屋の寝台と思しき所に寝ながら、ファルベはぐらぐらと心が揺れるのを感じていた。
控えめなノックの音がして、ズィルバーが部屋へと入ってきた。ひどく、顔色の悪い様子であった。





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