[携帯モード] [URL送信]
18 民の元で



カルテの一角。城外を行くフィデルは、国の外れにあるその地域を訪れていた。
「フィデル様!」
「こんにちは、フィデル様!」
「おーいみんな、フィデル様がいらしたぞっ!」
口々に歓迎の言葉を唱える人々。フィデルは城では見せないような笑みを浮かべて、彼らの声に返事をした。
ここは、パルフェの遺民街。フィデルが城仕えと引き換えに救った、元パルフェ国民の住む場所であった。
「フィデル様、いつもお疲れ様です」
「どうぞ、うちの店でお茶をお召し上がりください」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
町民達に連れられ、小さな店に入る。にこにこと笑う彼らに囲まれ、フィデルは心からの安らぎに頬を緩めた。

給料が支払われると、フィデルは必ずここを訪れた。
もとより城に仕えている分には、衣食住に不具合はない。いわゆる遊興費として使う家臣が殆どであったが、フィデルはそれをパルフェの遺民街で使うことに決めていた。
「みんな!フィデル様がお菓子をくださるよ!」
今日も、街の菓子屋で買ったものを、遺民街の子供に分け与えていく。年齢様々の子供達が、フィデルの周りに集まった。
「わーい!お菓子!」
「フィデルさま、ありがとー!」
口々に礼を言うと、我先にとお菓子を取り合う子供達。親達は微笑ましくそれを眺め、フィデルもまたその様子を嬉しそうに見つめていた。





[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!