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「どういうつもりだ?先程のあれは」
低い声色でケーニッヒが訊ねる。寝室の調度を整えていたフィデルは、はあ、と気の抜けた返事をした。
「…あれ、と仰いますと」
「何故カルテの案内を、…私の命令を断った」
暫し、無言の間が続く。シーツを丁寧に伸ばしながら、フィデルは気まずそうに口をもごもごさせた。
「その…有り体に言ってしまえば、『面子』に関わると思いまして」
「面子?お前のか?」
「いえ。…カルテ国の家臣…もっと言えば、ファルベ殿の」
「…それにどう関わると?」
寝台の脇のテーブルを飾りながら、フィデルは小さく口を結んだ。ケーニッヒは尚も聞き出そうと、その様子をじっと見つめていた。
「国王様は、御自身の身分や立場、権力にあまり御関心がないようですが…いえ、そうでなくとも、ファルベ殿は私に重要な仕事を奪われたようなもの。恨まれたとして不思議はありません」
テーブルに花瓶を据え、花の向きを整える。
「少しでも、お譲りできる仕事があるならば」
「…つまり私の命令よりも奴の矜持を選んだ、と」
「国王様」
語気が強まる。思わず口を閉ざしたケーニッヒに、怒るような口調で説き始めるフィデル。
「仰りたいことはお察しします…が、ファルベ殿の気持ちもお考えください。私のような部外者に席を奪われ、立つ瀬もありませんでしょうに…。それに、国民から家臣、すべての心を満たすのが主たる王…貴方の務めです」
そこまで聞いてケーニッヒは、まるでうんざりだとでも言いたげに首を振った。
「不思議な奴だ。名誉欲しさに城へ上る人間など、勝手にさせておけばよかろう」





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あきゅろす。
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