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ケーニッヒ国王の部屋から血痕が見つかり、王城が緊張に包まれる。堀まで続いたそれが途切れるのを見て誰もが国王の死を嘆いた。
ツヴァイ王子の変死に引き続く王族の殺傷事件。もはや城の人間達は気が気ではなかった。



「グリューネ。顔色が悪いね」
「…ズィルバーさん?」
廊下で出会したズィルバーが、グリューネに優しく声をかけた。
「君は忠誠心に厚い子だったから……国王様の死去は、さぞや悲しいだろう。まして、初めに見つけたとなれば」
言いながら、心配そうにグリューネの肩を叩くズィルバー。その顔には僅かに皺が走っていた。
「…ありがとうございます」
「いいんだよ。…私もケーニッヒ様に仕えて長かったが。こんなにも突然に、まさか……」
悲しげに顔をしかめるズィルバーを見ながら、グリューネは申し訳なさにそっと唇を噛んだ。

あれから、ケーニッヒ国王はロルベーア郊外の友人の元へ匿われることになった。
「私が生きていることは、黙っていて欲しい。…いや、いっそ死んだことにした方が良いかもしれない」
グリューネは、ケーニッヒ国王の言葉通り、城に戻ると敢えて国王の部屋へ行き行方知れずと騒ぎ立てた。
他ならぬグリューネの言葉を、疑う者はいなかった。

「とにかく。アインス様が心配だ…こんな状態では、心も安まらないだろうに」
ズィルバーの言葉で我に返る。グリューネは、様子を見てきます、とだけ告げると足早にその場を立ち去った。
「……やはり彼には、衝撃が大きかったのだろうか」
消えた後ろ姿に、ズィルバーはそう独りごちた。





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あきゅろす。
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