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「…え…?」
その場に跪き、深く頭を下げるファルベ。差し出されたナイフの柄を見て、グリューネは思わず声を上げた。
「…そうか。この部屋に、見慣れぬ顔……君はもしや」
「はい。第二王子様の殺害を企てた者を自白させるため、先日城より召し抱えられた…拷問人の、息子にございます」
「っ!」
グリューネに明らかな動揺が走った。
低俗の者が高位の人間に触れることは、耐え難い屈辱と無礼にあたる。まして、最下位の彼が最高位の国王に触れたとすれば。手にしたナイフの意味は、言わずもがなであった。
「……そんな…でも、」
「国王様。どうぞ、贖いを」
「国王さま!」
黙ったまま、ファルベを見た男…ケーニッヒ国王は、長く息を吐いた。
「……残念だが、私は今。立ち上がることすらままならない」
「…毒が抜けきるまで、もう少々かかるかもしれません」
「いや…どうやら、傷がかなり深いようだ。……ファルベと言ったか」
名を呼ばれ、顔を上げるファルベ。なんとか半身を起こすと、ケーニッヒ国王はグリューネへ向き直った。
「…グリューネ、内密に馬車を手配してくれ。懇ろにしている家が、ロルベーアの外れにあるんだ」
「は、…はいっ」
ちら、とファルベを一瞥し、急いで部屋を出るグリューネ。残されたファルベは、驚いたようにケーニッヒ国王の顔を見た。
「国王様…?」
「服が濡れているな。…堀に飛び込んだか」
「……はい」
「君のように聡明で、勇気のある子供が……たとえ拷問人であっても、君は命の恩人だ。…その罪は、咎めない」
「……………」
「そこにある布を、借りてもいいかね」
「え、…は、はい」
棚に掛かっていた大きな布を取り、ファルベがケーニッヒ国王へと渡す。それを巻き、顔を隠すように身に纏った。
「……これから、城を脱け出す。協力してくれ、ファルベ」





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