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一階の片隅、物置き同然の小さな部屋。急拵えでファルベ達に与えられた住処はそこであった。
無実か有罪か分からない人間の拷問には、処罰の拷問よりも当然時間がかかる。父親が朝早くから拷問部屋にて支度をする間、ファルベは一人ぼんやりと天井を眺めていた。
(もし、僕も城で働くことになったら…やっぱり、ヴァイスとは離れ離れになるんだろうか)
埃っぽく薄暗い部屋に、湿った考えが浮かぶ。家族の養いと恋人の存在、天秤は確かに揺れていた。
「………?」
どさ、と何かが落ちる物音。部屋のすぐ外からしたらしいそれに、ファルベは急いで扉を開け部屋を出た。
「……あ…!」
目前に飛び込んできた光景に、はっと息を飲む。
「だ、大丈夫ですかッ…!?」
部屋の前、廊下には一人の男が倒れていた。服装からして身分はかなり高い。城にいる時点で高位とは分かっていたが、ファルベは躊躇いなくその肩を揺すった。
「しっかりしてください!大丈夫ですか、ちょっと…あ、えっ…と、だ、旦那様!」
呻き声が上がる。ふと、その男の左脚から血が滴っているのを見つけた。
「怪我を…今、傷口の処置をしますから、」
「国王さま…?」
ファルベの言葉と重なるように、幼い声がした。少し離れた場所に佇む子供を見つけ、ファルベの表情が明るくなる。
「そこの君…!ちょうど良かった、こっちに来て手伝っ」
「国王さまが、っ…!ひ、人ごろしだっ…!」
数歩後退り、怯えた表情の子供はくるりと踵を返した。
「ま、待って!君、」
「グリューネ…!」
被せるように男が名を呼ぶと、その子供…グリューネは、ぴたりと立ち止まった。





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あきゅろす。
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