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「お前達が、ハンフから来た拷問人か」
ハンフから歩き通しであったファルベとその父親は、早速薄暗い地下---拷問部屋と地下牢の隣り合った、何とも陰鬱とした空間へと連れてこられていた。
「要件だけ説明する。先日、国王様の第二子君…ツヴァイ様が変死なさった。その殺人に与した疑いのある者を、自白させることが任務だ」
ぶっきらぼうに告げた牢番が、道端の野良犬でも見るような目つきで二人を交互に見る。
「……執行はどっちが?」
「私です」
「そうか。では、罪人を連れてくる」
そう言うと、牢番は格子扉の並ぶ廊下へと向かった。



一方、城の一角。リンゴの入ったカゴを抱き、グリューネが廊下を歩いていた。
「アインスさま、これなら食べてくれるかな」
弟の死後、ろくに食事もせず部屋に閉じこもっていたアインスを案じるグリューネ。長い城仕えの中で、七歳の幼いグリューネには既に、十分過ぎる程の忠誠心が育っていた。
アインスの部屋の前に辿り着くと、グリューネは控えめに二つ、扉を叩いた。
「……アインスさま、わたしです。グリューネです」
返事はない。アインスが部屋を出た形跡は無いのでいることは間違いないが、声はおろか物音一つしなかった。
「……アインスさま?ごはん、お持ちしました…とびらを、開けてよろしいですか?」
ややあって、小さな返事が返ってくる。扉に耳を押し当てていたグリューネは、失礼します、と部屋へ入った。





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あきゅろす。
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