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「とうさま、いってらっしゃい」
「ああ、行ってきます。良い子で待っているんだよ」
大きな背中を見送る幼い双眸。優しい声と足音が扉の向こうへ消えると、その幼子は家の奥へと急いだ。
「かあさま、きょうはどんなご本をよむのですか」
母の膝に縋りつき、嬉々としてその顔を見上げる。母は優しく微笑みかけ、その髪を撫でた。
「今日は昔々の騎士団のお話。グリューネ、ちゃんと椅子に座って聴くのよ」
「はぁい」
年端も行かぬ子供…やはり、やがては国王に仕える家臣となるところの彼、グリューネは、小さな木の椅子に座って甘えるような声をあげた。
「ねえ、かあさま、あしたは学校でけんのしあいがあるのです。わたしも、“きしだん”みたいにカッコよくたたかえたらいいなあ」
「あなたなら大丈夫、グリューネ。立派な騎士になって、王家の方々をお守りするのですよ」
「はい!」



カルテの王城に最も近いロルベーアの街。国の中でも豊かなそこには、大小様々の貴族や豪商が居を構えた。
グリューネの家もやはり、代々その場所に暮らしていた。
騎士の人員や城への寄付、王政を支える存在が軒を連ねるロルベーアで、グリューネの父もまた騎士団の一員として活躍していた。
父へ憧れ、国王への忠誠を間近に見続ける。グリューネは、貴族の子として立派に成長しつつあった。





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あきゅろす。
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