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「…ずっとトロイがついて来るから、いいもん」
「……ロワー様。せめて道順を覚える努力はしてください」
「わかったよ…!」
やけくそになったロワーが、ずかずかと教会へ入る。身なりを見てセフロワの子と理解した人々が即座に道を空けると、トロイは丁寧に頭を下げその後ろに付き従った。
人々が教会へ集まり、辺りが静かになる。壇上に姿を現した司教に、一同が熱い眼差しを向ける。



「お疲れ様、兄さん」
教会の小さな部屋。説教を終えた司教に、青年がそう声をかける。
「ああ。ありがとう」
「兄さんの話は、本当にためになるね。みんな、満たされたような笑顔で帰っていくよ」
「そうだと嬉しいな」
談笑している二人の後ろ、部屋の扉がコツコツと鳴る。
「はい。どうぞ」
「失礼します、司教様」
静かに扉を開け、深くお辞儀をする。トロイが先に部屋へ入れば、後ろからはロワーが恐る恐る足を踏み入れた。
「…ロワー様」
「う、……ああ。え…え、と」
こほん、と一つ咳払いをすると、ロワーは緊張した面持ちで二人を見据えた。
「ぼ…私は、サン・セフロワ家の長男…ロワーという者です。この街でご高名な、ルビーン司教殿に、お…お会いしたく、っ…」
しどろもどろのロワーを見て、司教がクスリと笑う。
「そんなに固くならずに…ロワー殿。初めまして、私はルビーン。この教会の司教をしています。…お会いできて、光栄です」
「私は弟のレーゲン、この教会の司祭です」
「サン・セフロワ家のお噂は聞いております。わざわざご足労、ありがとうございます」
ロワーの前に歩み寄り、右手を差し出す司教。握手を交わした後、ロワーは視線を感じて司教の顔を見上げた。





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