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190 エピローグ



隣国であるカルテの革命から、経つこと十数年。
カルテ共和国に、やっと平穏が訪れた。その知らせを受け、コラソンの国王エモシオンはカルテとの同盟締結へと乗り出していた。



城に近い街の一角、こじんまりとした教会。信心深い民は皆、神に祈りを捧げにそこへ訪れていた。
「今日は司教様のお話がありますからね。静かに聴いているように」
母親の言葉に、幼い兄弟が元気よく頷く。
「うん!司教様のお話、とってもすてきだもん!」
「ちゃんと聴いてるよ!」
隣人達が笑顔で挨拶を交わし、教会へと進み入る。老若男女を問わず、彼らは教会に深い信仰を寄せていた。
「ヴェール、ブランシュ!早くしろって!司教様の話が始まっちゃうよ!」
「待って、兄さん…!」
「クルールったら、もっとゆっくり歩いてよ…靴ずれになっちゃう!」
「ブランシュ、そんな洒落た靴履いて来るからだろ?」
「仕方ないじゃない、女の子だもの!」
わいわいとはしゃぐ子供達の声。街のほぼ全員が、この教会と、まだうら若き司教とを愛していた。



「トロイ。こっちでいいのか?」
高貴な身なりをした少年が、侍らせた従者にそう尋ねる。
「ええ。…しかしロワー様。もう何度も訪れているのですから、道ぐらい覚えてください」
そう言って肩を竦める、トロイと呼ばれた従者は、少年より少しばかり年上の青年。
「う……」
「セフロワ家の人間として…というより、普通はそろそろ覚えますよ」
「うるさいなっ!ち、地図見るの、苦手なんだよ…!」
「これではいつまで経っても、お一人で教会へ行けないじゃないですか」
ロワー・サン・セフロワ、この街で一、二を争う大貴族の一人息子は、呆れ顔のトロイに向かって拗ねたように頬を膨らませた。





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