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「ツヴァイと父を一度に失った。母への憎しみと王位という絶望を知った。お前に出会って別れたあの日、あの時、あの瞬間から私は、真の忠誠を欲した。お前という理想を知ってしまった。カルテという絶望を知ってしまった。
私の目は、あの日を境に何も見えなくなった。お前以外、何も。
気の狂うような城の生活の中で、お前を信じた過去だけが私を支え私に希望と夢を与えた。
母を殺し、臣下を遠ざけ、民を疑い、冷え切った心で国を治めた。皮肉なことだ、情を失えば失うほどに政は捗った。多少の恐怖を交えても、いや、恐怖を交えたからこそ、カルテは保たれた。
王として振る舞えば振る舞うほどに絶望が積み上げられた。忠義の軽薄さを、誠意の脆弱さを知った。信じることの愚かさと、疑うことの正しさを知った。
フィデル。お前は忘れていただろう、たった一日の出来事だ。お前にとっては他愛ない、当たり前の生き様だ。だが私にはそれが救いだった。全てを重ねる毎に、お前だけが私の救いとなっていった。
あの日のパルフェは美しかった。見上げた星々は輝いていた。澄んだ空気は心地良かった。無音の世界さえ愛おしかった。フィデル、お前が隣にいたから。
あの日のことが忘れられなかった。お前のことが忘れられなかった。
何も愛することの出来なかった私が唯一抱くことの出来た、真実の愛だ。
フィデル。私はお前を愛していた。
そして今も、お前を愛している」









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