[携帯モード] [URL送信]
184



無事に帰ってきた二人を迎え、一同は安堵に胸をなで下ろした。ケーニッヒがアインスを咎めようとして、フィデルの言葉にそっと諭される。
「我が国の民において、アインス様を危険に巻き込む者はいません…私はそう、信じております」
物怖じせず言い放った言葉は、たとえそれに根拠がなかったとして、ケーニッヒを納得させ、あまつさえ唸らせるには十分であった。



その夜。隣でツヴァイが寝息を立て始めたのを確かめ、アインスはそっと寝室を抜け出した。
「もし、何か私がお力添え出来るのでしたら…今夜、城の中庭の噴水前にいらしてください。お話をお聞きすることなら出来ます」
足取り重い帰路で、フィデルに言われた言葉を思い出し。アインスは期待と不安の入り混じった表情で中庭を目指した。
「……フィデル」
噴水の縁に腰掛け夜空を仰いでいたフィデルは、アインスを見るなり静かに手招きした。
「アインス様。いらっしゃったのですね」
「………」
「お話しにくいことでしたら、世間話からでも構いません」
「………」
「……星が、綺麗でしょう?」
「…星?」
やっと口を開いたアインスが、フィデルにつられて空を仰ぐ。闇空を明るく彩る星が、時折チカチカと瞬いた。
「……パルフェは、どこを見ても美しい。街も、空も、民も…話す言葉や、流れる空気さえも。私がそう感じるのは、この国を愛しているからです。そして、民やこの国に私が愛されているから」
「………」
「アインス様は、父上や弟君を愛していらっしゃるでしょう?」
「……え?」
「ケーニッヒ様やツヴァイ様も、きっとあなた様を愛しておられます。愛とは、そういうものです」
「………僕は」
フィデルの隣で、アインスは小さく拳を握り。吐き捨てるように呟く。
「僕は、愛されてなんかない。誰のことも、愛してないから」





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!