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「ソノリテ様。ここは、私にお任せください」
そう言って、ソノリテの前に進み出るフィデル。
「フィデル…?」
「ツヴァイ様や衛兵達が気づかなかったということは、アインス様はお一人か或いは同程度の身長の人間と共に、どこかへ行かれた可能性が高い…ツヴァイ様のお言葉通りならば、そう遠くへは行っていないはずです。私と衛兵達で捜せば、すぐに見つかるはず」
控えていたパルフェとカルテの兵士達に指示を出しながら、決意を秘めた目でソノリテを見る。
「ソノリテ様、ケーニッヒ様とツヴァイ様はここでお待ちください。…何としても、アインス様を見つけ出して参ります」



「こちらの道は茂みや木が多いので、皆さんで注意深く見ていってください。あちらは開けた道なので、私が捜しに行きます」
幾人かの兵士達と手分けして捜し始めたフィデルは、辺りを見渡せる小高い丘を目指して急ぎ足でいた。
「あ、フィデルさまだ!」
「あら…フィデル様、こんばんは」
そこでふと、道行く親子と出会す。丁寧に頭を下げたフィデルは、母親の方へ顔を向け人捜しの旨を告げた。
「実は、人を捜しているのです。ちょうどお子様と同じくらいで、赤い服を着た…」
「それならぼく見たよ!さっき、あっちの小川の前でぼーっとしてた子がいたんだ!赤い服着てたし」
少年の指差した先を見やり、ありがとうございます、と頭を撫でる。嬉しそうに笑った少年を連れ、母親は一礼するとまた道を歩いていった。
程なくして、小川の流れる音が聞こえてくる。ほとりに咲く花が、ところどころ摘み取られていた。
「……アインス様!」
丸まった背中を見つけると、フィデルは急いでその傍へ向かった。





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