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「…アインス様も、冠を作っていらしたのですか?」
「………」
黙ったまま、気まずそうに俯くアインス。お見せいただけますか、と優しく尋ねれば、アインスは崩れた冠をそっと差し出した。
「……なるほど。アインス様、少し見ていてくださいね」
そう言って、傍らの花を摘んだフィデルはそれを器用に絡め、綺麗に冠を作っていった。目を丸くして、それを見つめるアインス。
「…茎を優しく折り重ねるのです。一つ一つ、丁寧に…指先でここを押さえながら」
アインスの手を取り、自らが織った冠の続きを手解きする。次第に自分で手を動かすようになり、気づけばアインスは一人で花の冠を作り上げていた。
「…できた」
「そうです!アインス様、上達がお早いですね」
「………あの、…」
「…どうしました?」
「………」
アインスが何かを言いかけたその時、彼を呼ぶ幼い声がそれを遮った。
「あ!兄上も作ったのですね!」
ツヴァイが二人の元へ走り寄る。アインスの冠を見て、嬉しそうに笑いかけた。
「僕のよりキレイです…父上達に、見せに行きましょう!」
先行くツヴァイを見て、不安げにフィデルを見上げるアインス。フィデルはにこりと笑うと、アインスの肩に手をやった。
「行きましょうか、アインス様」
「……うん」



空の端がうっすらと金色に染まる頃。話に花を咲かせていたソノリテとケーニッヒが、どちらともなく帰りの時間だと呟く。
「今晩はゆっくりと休んでください、ケーニッヒ国王」
「ええ…お言葉に甘えて。アインス、ツヴァイ、帰るぞ」
「はい、父上!」
「……アインス?」
返事がないのを訝り、ケーニッヒが花畑を見回す。ツヴァイも不思議そうにきょろきょろと見渡し、兄上!と何度かアインスを呼んだ。
「……まさか」
「父上!兄上が、兄上がどこにも…!」
慌てて一同の元へ走り寄るツヴァイ。
「さっきまで、そこで冠を作っていたはずなのに…!」
ツヴァイが指差した先に散らばる花。ざわめく一同の中それを見たフィデルは、不意に表情を暗くした。





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