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「この場所をお見せするというのは、彼の提案なのですよ…この頃に城仕えを始めた者です。…フィデル」
「初めまして。ケーニッヒ国王、私はフィデルと申します」
深々と頭を下げたフィデルに、ケーニッヒが感心したように目を細める。
「ほう……新入りなのに、そこまで信用されていると…」
「ええ。彼は私の腹心です……とても有能で、民からの信も厚いのです」
言われて、気恥ずかしそうに微笑するフィデル。
「父上!私達は、ここで遊んでいても良いですか?」
ツヴァイの言葉で顔を向け、にこりと笑って頷くケーニッヒ。アインスの手を引き、花畑の中へ走っていくツヴァイ。
「お若くて元気な王子達ですね…」
「ソノリテ様、そんなお年ではないでしょう」
「ハハ、それもそうだな」
冗談っぽく笑い合うソノリテとフィデル。ケーニッヒはそんな二人をどこか羨ましそうに眺め、静かに目を細めた。



「父上!見てください、作ってみました!」
花の冠を持ったツヴァイが、木陰にいたケーニッヒの元へ走り寄る。
「おお。良くできたな、ツヴァイ」
えへへ、とはにかむツヴァイがケーニッヒにしゃがむよう急かす。冠をそっと頭に飾れば、満足そうに頬を赤らめた。
楽しげにその様子を眺める一同。ふと、何かを見つけたフィデルがそっとその場を離れた。
「……アインス様」
ビクッ、と小さな肩が跳ねる。花畑の一角にしゃがみ込んでいたアインスは、フィデルの方を振り返るなり慌てて何かを背中に隠した。
「え、な、に」
「何をなさっているのですか?」
「……なんでも、」
はらり、アインスの手から一輪二輪と花が散った。





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あきゅろす。
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