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幾人かの家臣達を引き連れ、ソノリテ達はパルフェの街中へ繰り出していた。
「しかし、豊かな街だ…見晴らしが良くて、雄大な気分になります」
「この国の良さの一つです。海からの風も心地良く、悪い気が吹き飛んでいくようです」
他愛もない話をしながら街並みを見学する。二人の国王の後ろ、二台目の馬車にはカルテの王子達が乗っていた。
「兄上と出掛けるのも久しぶりですね」
「…ああ」
無邪気な笑顔のツヴァイと、対照的に暗い表情のアインス。
「…兄上?緊張しているのですか?」
「え、…いや、えっと」
「大丈夫。僕らはまだ子供なんですから…」
「……うん」
ね!と笑ったツヴァイに腕を組まれ、アインスは微かに笑みを返した。



広い花畑へ出る。馬車を止め、一面の色彩に目を輝かせる一同。
「おお……美しい」
「春先は、いつもこのように見事な絨毯を作り上げるのです。夏場の緑一色も、それはそれで美しいですが」
「ソノリテ殿、あなたは素晴らしい国で育ったのですな…」
感嘆の溜め息を漏らすケーニッヒへ、照れくさそうに微笑するソノリテ。
「兄上、見てください!」
馬車から飛び降りたツヴァイがアインスの腕を引く。降り立ったアインスもやはり、感嘆に僅か息を吐いた。
「凄いですね、カルテでは見られないようなお花畑です…!」
「…うん…」
「王子達にも気に入ってもらえて、嬉しいです。…なあ、フィデル」
振り返ったソノリテの言葉に、一人の若者が頷く。
まだ城仕えの日も浅く、しかしソノリテの外出に付き添う程の家臣…彼こそが、若き頃のフィデルであった。





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あきゅろす。
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