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178 遠い記憶



それは二十年近く前のこと。隣国であるカルテとパルフェは、同盟を結ぼうと交渉を重ねていた。
規模は小さいが肥沃な土地にあるパルフェと、大国ではあるが寒冷な地にあるカルテ。互いの利を合わせる為、会議や談話が繰り返された。

「ようこそ、ケーニッヒ国王。我がパルフェへ」
まだ青年のソノリテが玉座から立ち上がり、ヴォルフ…かつてのケーニッヒ国王、に頭を下げた。
「お会いできて何よりです」
「こちらこそ。ソノリテ国王」
微笑みを交わし、握手する二人。両国の家臣達もその様子を穏やかに眺めていた。
「ご足労をおかけしました。ちょうど正午を回りましたから、昼食でもいかがでしょう。我が国の料理を、是非」
「ありがとうございます。喜んで」



談笑の交わされる大食堂。ソノリテは、ナイフとフォークを置き対面のケーニッヒへ微笑みかけた。
「どうでしょう、ケーニッヒ国王…食事が済んだら、パルフェの街を案内したいのですが」
「それは素晴らしい。是非、お願いしましょう」
「父上!私達も行ってよろしいでしょうか?」
「……ツヴァイ?」
「肥沃で美しいと噂のパルフェの街を、一度見てみたかったのです…!」
皿の中身を至極綺麗に平らげた少年、ツヴァイと呼ばれた彼は、ケーニッヒを見て大人びた笑顔を浮かべた。
「そうか。そうだな、将来的にお付き合いをする国のことだ…お前達も、今からよく目に焼き付けておきなさい」
「はい!」
「アインス。お前も来るだろう?」
アインスと呼ばれた---彼こそが現ケーニッヒ、“ブルート”であるところの---少年は、どこか憂鬱そうに頷いた。
「それではケーニッヒ国王。食事の後、少しばかり休んだら城を出てみましょう」





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