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「先刻は、ありがとうございました」
食事を終え、給仕達の片付けをぼんやりと見守っていたフィデルに、エモシオンがそう耳打ちした。
「あなたのお力添えがなければ、あの窮地は越えられなかった」
「いえ…。国王様は難しいお方です、こちらこそご面倒をおかけしました」
「そうだ、エモシオン殿」
何か思いついたらしいケーニッヒが、すっくと立ち上がる。
「食事も終えたことですし、我が国を少し見ていかれては如何かな。せっかくの長旅だ、堅苦しい城だけ見て終わりもつまらなかろう」
「…はい、ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきましょう」
「では、フィデル。エモシオン殿をご案内してさしあげなさい」
ケーニッヒに目で指図される。フィデルは頭を下げようとして、違和感に暫し動きを止めた。
「…どうした?」
「……国王様。申し上げにくいことですが、私はその任を承りかねます」
え、とエモシオンから声があがる。ケーニッヒも同じように目を丸くし、不思議そうにフィデルを見た。
「私はこの国に仕えて間もない新参者。エモシオン殿をご案内するという任に就くには、カルテに関して些か未熟者です」
「では、誰がいいと申す?」
「…ファルベ殿など、如何でしょう。私より遥かにカルテ国に造詣の深いお方です」
名を挙げられたファルベは、戸惑いを隠そうと小さく咳払いをした。ケーニッヒの視線が、そちらへ移る。
「そうか。ではファルベ、エモシオン殿をご案内しろ」
「はい…畏まりました」
腑に落ちないといった表情のエモシオンは、歩み寄ったファルベに会釈を受けて漸く「よろしく」と返した。





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あきゅろす。
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