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アインスとドライがベゾンダの家へ訪ねた数日後に、ミエドが数人の兵を率いて訪れてきた。家の前で迎えるフィデルに、深く頭を下げて挨拶するミエド。
「お久しぶりです、ミエド。遠路遥々すみません」
「いえ…エモシオン様の言いつけですので。……出発の、準備は」
「出来ております。ただ、ここを出るのは夜が良いかと」
「そうですね。では、今夜…」
「ありがとうございます。少しの間ですが、どうぞ家の中へ」
ミエド達を招き入れ、フィデルは留守を頼むと単身ダンドリオンを目指した。
どこか張り詰めた空気の中、ヴォルフの家を訪ねる。ノックに応えたのは他でもない、ヴォルフその人であった。
「ああ…フィデル殿」
「こんにちは、ヴォルフさん」
「話があるようだね。さあ、中へ」
「失礼します」
部屋へ上がったフィデルは、ふと違和感を覚え室内を見渡した。普段なら数人はいた街の住人が、今は一人もいない。
「……ヴォルフさん」
「国王のお触れがあったが…ダンドリオンの住民には、この争いには手を出さないように言ってある。それから、長の役割を街一番の賢い若者に譲った……私の元には、もう誰も来ない」
「…お一人で、何かなさるおつもりですか」
「………贖罪だよ」
「……贖罪?」
訝るフィデルに笑いかけると、ヴォルフは床を突き杖を鳴らした。
「この脚の怪我は、私の罪の証……贖う為に、誰にも迷惑をかけないどこか遠い所で…一人で生きようと思ってね」





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あきゅろす。
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