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「ケーニッヒ様。偵察の結果を、ご報告します」
王の部屋へ入り、執務卓へ向かうケーニッヒにそう告げるファルベ。ああ、と頷いたケーニッヒは、読んでいた紙面から顔を上げた。
「反王制を唱え武力行使の期を待つ素振りは、カルテ北部と南部にそれぞれ見受けられました。北部の中心はシャムロックとハンフ、南部を率いるのはミュゲと…遺民街の人間です」
「…………」
「指揮統率はミュゲが行っている模様。反乱の決行はこの一週間のうちに、と」
「徴兵ではなく義勇兵を募れ。ミュゲや遺民街と聞けば、ネニュファールあたりは喜んで差し出すだろう」
ケーニッヒの命令を聞き、ファルベの後ろに控えていた衛兵達が返事と共に散っていく。
「……ファルベ」
「何でしょう」
「王というのは、実に難しい。本当ならば、私情は許されない……弟だったら、うまくやれたのだろうか」
「…………」
「この国に、王など要らなかったのかもしれないな」
「……私は、“王”ではなくあなたの家臣です。あなたに従い、あなたの為に生きるのみ……それはあなたが決めた、私の運命です」
「後悔は無いか」
「……この世に生まれてきたことを、後悔しなかった日はありません」
失礼します、と頭を下げ部屋を後にするファルベ。その背を見やり、ケーニッヒは憂鬱に目を伏せた。
「生まれたことを、…か」





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