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161 革命前夜



政務をこなし、早々に部屋へ戻る毎日。あれ以来、ファルベとは廊下ですれ違うことすら減っていた。
異変を感じ取ったグリューネに訳を尋ねられても、フィデルは静かに首を横に振った。



「………フィデル、さん…?」
恐る恐る、といった様子でベゾンダが声をかける。テーブルの前、座ったままのフィデルは何も言えずに俯いていた。
「……お話、というのは」
「………とても…申し上げにくい、ことですが…」
ゆっくりと顔を上げる。ベゾンダと目が合えば、フィデルは小さく顔を歪めた。
「ベゾンダさん。…この国から、お逃げください」
「…え、」
「ケーニッヒ様のご命令です」
ベゾンダの表情が、少しずつ強張る。そうして長い無言の間に、諦念の色を纏う。
「………どこへ」
「コラソン国です。王家の方々に、話は通してあります……あの結婚指輪と引き換えに、匿ってもらえと…ケーニッヒ様が仰いました」
「………はい。わかりました」
「ルビーン様と、レーゲン様もご一緒に、お連れなさるよう」
「え…あの子達も…?」
「あなたの、お子様達です」
目を伏せ、小さく唇を噛む。頷いたベゾンダは、フィデルの指示を聞き支度を始めた。



革命の噂を報告したフィデルにケーニッヒから課せられた使命は、まず王族に縁のある人間を国外へ逃亡させることであった。
ベゾンダの元へ、纏まった荷物を持ったアインスとドライが訪れる。コラソンから迎えが来るまでの間、フィデルは護衛も兼ねてベゾンダの家で過ごした。





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あきゅろす。
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