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153 斜陽の国



フィデルが昏睡とも言える眠りの中にいた頃。
「レーゲン。入るぞ」
ケーニッヒがドライの部屋を訪れる。珍しい客人に、キョトンとして顔を向けるドライ。
「お父様…?」
「……先日、フィデルと遺民街へ行ったそうだな」
その言葉を聞き顔色を変えたドライは、手にしていた本を閉じると寝台から飛び降りた。その慌てように、ケーニッヒが微かに目を細める。
「そ、そう、だけど」
「何があったのか、聞かせてくれ。フィデルはまだ起きないようだから」
「なにが…って」
「危ない目に遭ったと聞いたが」
何かを言いかけ、ぐっと飲み込むドライ。ケーニッヒは屈んでその肩を抱き、優しく諭すように言葉を続けた。
「お前に何かあっては、悲しいだろう」
「だって…だって、フィデルは悪くないもんっ」
「ああ。奴は悪くないと、私も聞いている。安心しなさい」
「………でも…いみんがいの人だって、みんな…本当は、いい人だったんだよ」
べそをかきながら訴えるドライ。その悲痛な言葉に、ケーニッヒは刹那、顔を歪めた。
「……遺民街の人間が、お前達に危害を加えようとしたのだな」
「…………うん」
「あの街には、二度と近寄らないようにしなさい」
「……はい」
優しく頭を撫で、微笑みかける。ケーニッヒはドライを強く抱き締めると、ゆっくりと立ち上がり部屋を後にした。





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あきゅろす。
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