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「……フィデル、殿…!」
エモシオンを庇うように馬へ背を向ける。僅かに距離を置き、フィデルの前で馬の暴走は止まっていた。
「……大丈夫ですか、エモシオン殿」
手を貸して助け起こす。馬車から降りたグリューネと馬を鎮めたミエドが、慌てて二人の元へ駆け寄った。
「エモシオン様!」
「王子、フィデル殿…お怪我は」
「ええ。私は、なんとか…。お二人はご無事ですか」
立ち上がりざまにフィデルとグリューネの顔を見て、申し訳なさそうに尋ねるエモシオン。
「私達は、大丈夫です」
「エ、エモシオン様…!」
ミエドが焦りながら、エモシオンの傍らに回る。しかめっ面をしたエモシオンが、我が子を叱るようにミエドの頭を軽く叩いた。
「ミエド!お客人に何かあったらどうするのですか…!ちゃんと馬の躾をしておきなさいと、あれほど」
「エモシオン殿。どうか、そんなに叱らないであげてください」
フィデルにそう言われ、エモシオンが言葉に詰まる。目に涙を溜めていたミエドは、不安げにフィデルの方を見上げた。
「彼はまだ子供…失敗をすることもあります。今回は、大事には至らなかったのですから」
「……フィデル殿が、そう仰るなら……。ミエド、次はありませんからね」
「は、はいっ…!すみませんでしたっ」
慌ててぺこりと頭を下げるミエド。フィデルは優しく肩に手をやると、そのまま慰めるようにミエドの肩を抱いた。
「大丈夫です。あなたは少しずつ学んで、立派な使用人になりなさい」
興奮の収まったらしい馬の手綱を、ミエドへ渡す。緊張した面持ちで頷いたミエドは、三人を乗せ改めて馬車を出した。





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あきゅろす。
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