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エモシオン達に見送られ、カルテへ向かう船に乗った二人。フィデルは、遠ざかる地平線を眺めながら静かに口を開いた。
「グリューネ殿」
「…何です?」
隣に並び、優しく問いかけに応えるグリューネ。その声色に安心してか、フィデルは緊張を解くと複雑な表情を露わにした。
「……何故、ファルベ殿は私に真実を話してくださらなかったのでしょう」
「え、」
「昨日のことです。私はてっきり、遺民街に全てを押し付けて終わりにしていたのかと…」
「……山賊の件ですか」
「…私は、本当に…パルフェのこととなると、見境を失ってしまう」
「ファルベ殿は、気にしていないと思いますよ。あなたに剣を向けられたことも、勘違いを受けたことも」
「……そうでしょうか……」
落ち込んだ様子のフィデルを見たグリューネは、眉を狭め考え事をするように暫し黙した。
「…………」
「……あなたには話すなと、ファルベ殿から口止めされていたのですが」
「え?」
決意を込め、固く結んでいた口を開くグリューネ。
「一時期…遺民街の人々と、隣街や近くの街で…諍いがあったことは、ご存知ないでしょう」
「……どういうこと、ですか」
さっと色を失ったフィデルを見て、グリューネは言い辛そうに顔を伏せた。
「言うなれば異民排斥…もっと簡単に言えば、弱い者虐めということです。カルテの人々は、敗戦国であるパルフェの人間が生き残り、街まで形成している現状に、不服を申し立てていたそうです」





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