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その日の夜半。フィデルは正装のまま、ケーニッヒの寝室へと向かっていた。
「……っ」
部屋の前、待ち構えるように立っているローサに刹那身構えるフィデル。
「フィデル殿。部屋に入る前に、凶器の有無を確認させていただきたい」
「…ああ…失礼いたしました」
上着を脱ぎ、肌着のみとなったフィデル。ローサは慎重に、その上から服の中を確かめた。
「…細い躯ですな。ケーニッヒ様のお眼鏡に叶うか」
「………」
「さて。終わったぞ」
脇に控えていた兵士から上着を受け取ると、ローサがそれをフィデルに着せた。
「ご武運を」
軽く背中を叩かれ、苦笑で返したフィデルは部屋へと入っていった。



「失礼いたします」
寝室では、ケーニッヒが退屈そうに書物を繰っていた。開口一番、寝台へ座るよう促す。
「そこのワインを注いでくれ」
「畏まりました」
慣れた手つきでワインのコルクを抜くフィデル。グラスに赤紫が満ちる。
「どうぞ」
差し出されたグラスを傾け、一気にワインを呷る。突き出されたそれに、もう一度ワインを注ぎ足した。
「………毒は、盛らないのか?」
ぽつりと呟いたケーニッヒの言葉に、フィデルは眉を顰めてグラスを見やった。
「…何故、私がそのようなことを?」
「していないならば良い」
「正直に答える者などいないと思いますが」
「ではお前も嘘を?」
ケーニッヒが顔を向けると、フィデルは神妙な顔つきで首を横に振った。
またしても一度にワインを呷るケーニッヒ。ふ、と息を吐くと、フィデルの手からワインボトルを奪い取った。





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