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「それで。国王様は、どのように山賊に対処しようと?」
グリューネの問いに、フィデルは漸く顔を上げエモシオンを見た。
「この争いが終わり次第、早急にコラソンの領民であることを確認し…こちらで身柄を確保すると。比較的規模の小さい集団とのことで、カルテ側も協力してくださると…お聞きしました」
「……そう、ですか。ありがとう、ございます」
フィデルがもう一度、グラスの水を含む。エモシオンは申し訳なさそうに眉根を寄せると、給仕に新しい水差しを頼んだ。



「…いけないとは分かっていても。パルフェのこととなると、冷静さを欠いてしまう」
翌朝。城を出る途中、フィデルは落ち込んだ声でそう呟いた。グリューネが、励ますようにその肩を叩く。
「仕方ありません。あなたの、大切なものなのですから」
「お待たせしました、フィデル殿、グリューネ殿。馬車の用意が出来ました」
エモシオンが示した先、ミエドが待つ馬車へ向かう。グリューネとフィデルが先に乗り込み、エモシオンが馬車へ足をかけたその時。
「…う、わあっ!」
突如として、手綱の先で馬が暴れ始めた。ミエドの制止も聞かず、乗りかけたエモシオンを振り落として滅茶苦茶に走り始める。
「い、っ…!」
地面に叩きつけられたエモシオンが、ハッとして顔を上げる。制御の効かなくなった馬が、エモシオンに向かって突進してきていた。
「エモシオン様!」
ミエドの悲鳴が、馬の嘶きと重なる。反射的に目を瞑った刹那、何かの影がエモシオンの前に被さった。





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あきゅろす。
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