[携帯モード] [URL送信]
107



「そういえば、フィデル殿が以前お手紙をくださったシエロの山賊のことで」
ナイフとフォークを置き、エモシオンが思い出したように口を開く。フィデルは微かに目の色を変え、グラスに入った水を含んだ。
「この時期に厳しいとは思いましたが、父上に話をしてみました」
「国王様は、何か…?」
「それが…父上はある程度、既に計を案じていたようです。それも、カルテの方からの意見を受けて」
それを聞くと、フィデルとグリューネは互いに顔を見やり眉を顰めた。
「…グリューネ殿。もしかして」
「恐らく、そうでしょう」
「……?」
エモシオンが目を丸くすると、グリューネは微かに苦笑いを浮かべた。
「エモシオン王子。国王様は、誰から話をお聞きになったと?」
「え…と、確か、ファルベという方……あっ、あの時の!」
腑に落ちた、というように膝を打ったエモシオン。フィデルは、ふとその表情を暗くした。
「………何故、あの人は…」
「しかし何故、あの人が父上に話を通せたのでしょうかね。フィデル殿ですら、私を介したというのに」
エモシオンの言葉で、グリューネは気まずそうにひくりと口端を歪めた。
「…エモシオン王子。念の為申し上げておきますが…ファルベ殿は、フィデル殿よりも城仕えの長い、ケーニッヒ様の腹心ですよ」
「………え?」
グリューネの言葉に、エモシオンが顔色を変える。いよいよ苦笑を禁じ得なくなったグリューネが、俯きがちなフィデルに気づくと小さく咳払いをした。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!