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船がコラソンへ到着すると、数人のコラソン国衛兵が二人を出迎えた。
「フィデル様にグリューネ様ですね。お手紙を拝見させていただきました」
一礼した兵士達が、馬車を止めている場所へ二人を案内する。
「お久しぶりです。フィデル殿」
「エモシオン殿…!?」
馬車の傍らから歩み寄ってくるエモシオンの姿を見つけ、二人は驚きに目を剥いた。
「あなたがいらっしゃると聞いて」
「…それは…わざわざ、ご足労をおかけしました」
「…ええと…そちらの方は」
「グリューネと申します。エモシオン王子」
「ああ、…すみません。あの時もいらっしゃった方ですね」
照れ隠しに頭を掻いたエモシオンは、馬車の方を振り返ると控えていた従者に合図をした。
「ミエド。馬車を出そう」
「…は、はい…」
ミエドと呼ばれた少年は、三人が乗り込むのを確かめると手綱を引き、馬車を城へ走らせた。



コラソン国王との交渉は、二人が案じていたよりすんなりと終わった。異民族への決定打が今一つ欠けていたところ、渡りに船と喜んだ国王はすぐさま手を打ったのだった。
「とりあえず、うまく事が運びそうですね」
「ええ」
「お待たせしました。フィデル殿、グリューネ殿」
エモシオンたっての希望で、夕食の席を共にすることになった二人。後ろに控えたミエドが、エモシオンに背を押されておずおずと頭を下げる。
「彼は…?」
「ミエドと言って、最近、私専属の使用人になった者です」
「初めまして。ミエド」
「……よろしく、お願い、します」
体を強張らせるミエド。三人は顔を見合わせ、和やかに笑った。





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