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コラソンへ発つ支度を済ませたフィデルはその夜、会議の終わりにケーニッヒから耳打ちされた夜伽へ出向いた。
「…失礼します」
部屋の寝台に座し、ケーニッヒがフィデルを手招く。隣へ収まったフィデルの肩を抱き寄せ、その髪にそっと口付けをした。
「明後日には出立か。…分かっているとは思うが、無事に帰るように」
「はい。勿論です」
「それにしても…お前から、あんな案が出るとは」
「え…?」
「いや。似ていると、思っただけだ。…昔、私の父上もよく…他国との同盟協力を使っていたのでな」
フィデルを横たわらせ、ゆっくりと覆い被さるケーニッヒ。
「パルフェとも、一時的に協力していた」
その刹那、フィデルの瞳が動揺に揺れる。暫し忘れかけていた感情が、静かに頭を擡げた。
「そうだ。二十年は前、」
「ケーニッヒ様」
その首に腕を巻きつけ、縋りながらフィデルは小さく声を荒げた。
「あなた様の口からそれ以上、祖国の名を聞きたくありません」
「………そうか」
そのまま寝台に縺れ込む二人。首元へ顔を埋め、耳を優しく甘噛みする。
「興が乗らぬなら、媚薬でも使おうか」
囁きに首を振って拒絶したフィデルは、自らケーニッヒの唇へ自分のそれを重ね。
「………」
初めてフィデルから仕掛けてきたそれに、ケーニッヒはどこか悲しげに目を眇めた。





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あきゅろす。
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