103 「…コラソンとの同盟?」 それから後の、重臣達の会議。ケーニッヒは読んでいた資料から顔を上げ、訝しげな声を出した。 「ええ。隣国であるコラソンと同盟を結び、有事の際には協力を仰ぐ…一国では厳しい戦いも、ある程度の優勢を保てます」 「つまり、コラソンを後ろ支えとして戦争に進めと?」 「いえ……何となればそれもありますが、基本的にはナチュレへの牽制です。向こうも、二国相手には戦いを躊躇うかと」 「どうでしょうな…コラソンは、ナチュレと戦争をして押し負けた過去がありますし」 苦々しいローサの言葉に、フィデルは手元の資料をテーブルへ置いた。 「ですが、それ以降コラソンは軍事力の増強を図っています。主に、海軍について…その知識と武器の提供だけでも、かなりの助けになります」 「グリューネ。コラソンとの条約は確か、」 「現行のものは相互不可侵、貿易特恵の保証のみです。最終更新は、半年前のものです」 「そうか…。フィデル、コラソンと同盟を結べるという心算はあるのだな?」 「はい。コラソンが現在、南部にて異民族との戦争に悩まされている件で、こちらが先に援助の申し出をすれば」 「交換条件、か。…悪くはなさそうだ」 「では、私がコラソンへ交渉に伺います」 「そうだな。フィデル、それから…グリューネ。お前にも任せよう。一人での交渉には、少し不安が残る」 「はい」 「畏まりました」 「南側の海路を行くことを奨めます。シエロ山にはまだ、山賊が潜んでいるでしょうから」 ファルベの忠告に頷いた二人は、顔を見合わせると小さく微笑し合った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |