[携帯モード] [URL送信]
101



「おお。ようこそフィデル殿、よくぞいらっしゃった」
奥から現れた老人が、左手で杖を突き足を引きずりながらフィデルの前へ歩み寄る。急いで肩を貸すフィデルに礼を言うと、ヴォルフは杖を置き椅子へ腰を下ろした。
「あなたを呼んだのは他でもない。ナチュレと我が国の動向についてお聞きしたい」
「…はい」
「ああ、挨拶が遅れたね。私はヴォルフ、このダンドリオンの街で長をしている」
「ヴォルフさんはこの街一番の賢者。我々の総意をいつも、纏めてくださるのです」
脇に控えていた男がそう言うと、ヴォルフは困ったように笑った。
「大層なものじゃあないがね。…それで、フィデル殿。街の皆で話し合ったのだが……我々は、戦争を回避する術はないか、と考えている。なにせ、この街はナチュレに近い。出来るだけ避けたいのが本音だ」
「…はい」
「何か、城で戦争への動きや…あるいは反対の動きはないだろうか」
「……現在のところ、城内はどちらに舵を切ることも出来ていない状態です。先手を取れという意見もありますが、敵の能力から見て慎重になるべき、という意見も」
「……フィデル殿。少し前に、あなたの噂を聞いてね…この頃に城へ登った、優秀な人だと」
「…え?」
突然のヴォルフの言葉に、フィデルは戸惑いを見せた。
「出来れば、あなたの意見を聞きたい」
「……私は。…私も、戦争を起こさないようにしたいと思っております。しかし、ナチュレの行動がこれ以上エスカレートすれば……避けられないことだとは」





[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!