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「……分かりました。確かに、何かあっては危険ですからね」
「それに、昔ズィルバーに言われたんだ。戦争中は、市民の気が立っていることが多いって」
どうやら、戦争の予感はアインスも感じていたらしい。フィデルを不安そうに見上げながら、そう言葉を続けた。
「僕もそうやって言われて、外出をやめた。前の、あ………前の…その、…戦争の、時に」
フィデルの顔を見て口ごもるアインス。その意味を察し、フィデルは優しく苦笑いを浮かべた。
「…アインス様。あなたは優しい人だ」
きっと素晴らしい王になりますね。そう言って、アインスの髪を優しく撫でる。
「畏まりました。ドライ様を、決して危険な目には遭わせません」
アインスの表情が安心したように緩む。では、と頭を下げ、フィデルは自室へと戻った。



それから、少し経ったある日。
「もし、フィデル様」
遺民街へ赴く途中、フィデルを呼び止める声がする。振り返って見れば、そこにはカルテ市民の姿があった。
「はい。何でしょうか」
「突然申し訳ありません。…お会いしてほしい方が、いらっしゃるのです」
「え…?」
「このダンドリオンの外れに住んでいる、ヴォルフという老人です。ヴォルフさんが、是非フィデル様にお会いしたいと」
「……わかりました、行きましょう」
そう言って、歩き出した男に続きフィデルは一件の家を訪れた。
部屋へ上がり、奥に向かって声をかける男。
「ヴォルフさん。フィデル様が、いらっしゃいました」





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