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「どうやってそれを?」
「海賊行為を働いていた下っ端の一人に吐かせました」
「…なるほど。生きて帰したのだな?」
「勿論です。戦争の理由を与える必要はありません」
「こちらの海賊被害については?」
「相手の知らぬ存ぜぬの一点張りで終いでしょう。所詮は荒くれた小市民の言質、信用は酸っぱい葡萄酒よりも無価値です」
「随分と不平等な話だ」
「手の早いナチュレの常套手段ですな。火種を播きながら風が吹くのを待てば良いのですから」
「厄介な君主だ」
「円卓の上で腹を割る相手ではありません」
ケーニッヒとファルベの応酬が、延々と続く。
フィデルはその様子を目を丸くして見ながら、隣で肘をつき始めたゲルプへ耳打ちした。
「……我々は何をすれば」
「こうなれば、私達には手も足も出ませんよ。あんな風にケーニッヒ様と渡り合えるのは、ファルベ殿くらいだ」
「…よくあるのですか」
「まあまあ。あれでもう少し、…グリューネ殿くらい険の無い方ならば、もっと人望も厚かったでしょうに」
見たこともない程の、幼い歓喜が垣間見えるケーニッヒの表情。フィデルは、物珍しそうに二人の会話を眺めていた。



会議が終わり、部屋に戻る道中。その背後から、フィデルを呼ぶ声がした。
「……アインス王子?」
「少し、話があるんだ。…ドライのことで」
「どうなさいました」
「……まだ、ドライを連れて外に出たりしてるよね」
「…ええ…」
「…その……もし、どこかの国との戦いが始まりそうなら、ドライを連れ出すのは少し控えてほしいんだ」





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