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「…?」
差し出されたグラスを見て、ケーニッヒに疑問の目を向けるフィデル。ケーニッヒは不敵に笑いながら、ぐいとグラスを押し付けた。
「お前も飲め」
「…ケーニッヒ様。先日も申し」
「これは命令だ、フィデル」
強い語気で言われ、微かに唇を曲げながらグラスを受け取るフィデル。なみなみと注がれるワインに、頬が強張るのが解った。
無言のまま、フィデルの顔を見るケーニッヒ。
「……畏まりました」
躊躇いながらも、グラスを呷る。アルコールは即座に体へ回り、頭は早くも痛みを訴え始めた。
僅かしか減っていないワインを見て、顔をしかめる。無理矢理喉へ流し込めば、強烈な酔いに侵される。
ケーニッヒはそれを見てにやりと笑うと、やおらフィデルを寝台へと引き倒した。空のグラスがカーペットで跳ねる。刹那、その瞳が恐怖に揺れた。
「…どうした」
「っ、いえ」
ケーニッヒの、双眸のスカーレットがフィデルを捉える。宛ら大蛇に睨まれた痩せ蛙のように、フィデルの細い躯を緊張が走った。
「……ほう…そうか。お前、男の相手は初めてか」
ひ、と短い悲鳴が上がる。尚も笑みを湛えながら、ケーニッヒがその頬へと手を添えた。
「悪いようにはしない。安心しろ」
ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねる。緩く閉じられた歯の間から舌を侵入させ、優しく歯列をなぞった。
「んッ、…んん、っん…!」
アルコールに侵された体には力が入らないらしく、押し返そうとする手はケーニッヒの胸板に弱く触れるだけだった。





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