1 「ったく…お前がタラタラしてっから、クロウのじいさんに怒られただろ…!」 一本の木の傍らで、ロークスがそう言ってカストフを睨む。ごめんよー、と笑ったカストフは、「でも」と言葉を続けた。 「タンナが速すぎるんだよー」 「…確かに」 「え?そう?」 けろっとした表情で振り返るタンナに、二匹は思わず顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。 「それよりほら!この木の樹液、美味いだろ!」 「そうだねー」 「まあ、それは…」 「昨日見つけてからさぁ、ずーっとお前らに教えたかったんだ!」 そう言ってぱぁっと笑顔になるタンナ。カストフとロークスは、それを見るなりやれやれと肩を竦めた。 「おはようございます!クロウさん!」 朝食を終えた帰り道、通りかかった穴蔵に声をかけるタンナ。気まずい顔のロークスの隣で、カストフが一つ欠伸をした。 「ん…タンナか、おはよう」 「あのさぁクロウさん!俺達、今日は西の湖に行こうと思ってるんだ!」 「おー、そうか…水には落ちるなよ」 「はい!行って来まーす!」 威勢良く頷いたタンナは、二匹の元へ戻ると先を急ぐように飛び去っていく。 「まったく…朝から元気な奴だ」 後を追うように二匹が消えていくのを見て、クロウは満足そうに鼻を鳴らした。 [次へ#] [戻る] |