24 「…ごめんなさい、勘違いして」 ヒールから事情を聞くと、タンナはそう謝った。大丈夫、と笑ったコッブは、タンナへ近寄って握手を求めた。 「よろしく、タンナさん」 「……えっと、…よろし、く」 差し出された手を見て、刹那身を竦ませるタンナ。恐る恐る手を出せば、冷え切った指先に温かい体温が触れた。 「うわ、冷たい……タンナさん、ずっとここに?」 「え、…ああ」 「タンナさんとは、いつもこうやって会っては一緒にお話するんですよ」 嬉しそうなヒールの言葉に、え、とコッブが声をあげた。 「いつもって…昼行性のタンナさんが?」 「あ、いや、それは!」 俄かに慌てだすタンナ。ヒールがきょとんと首を傾げると、アハハ、と誤魔化すように乾いた笑い声をあげた。 「寝る間も惜しい、って言うか、なんていうか、」 「ふーん…元気なんですねえ」 「まーそれほどでも!ほら、俺達は寿命短いし!仲間といられる時間も、」 「……タンナ、さん?」 そこまで言って、タンナはぴたりと言葉を止めた。ヒールとコッブの表情が、不安げに陰る。 「……タンナさん。どうして、泣いているんですか…?」 ゆっくりと膝を折って泣き崩れる。誰もいない湖に、タンナの泣き声だけが幽玄に響いていた。 第二章 ニンゲン (それは、自然という名の世界を脅かす災厄) [*前へ] [戻る] |