[携帯モード] [URL送信]
11


二匹は暫し、近くの木の枝にとまって蛍達が魅せる舞台を楽しんでいた。

「…綺麗ですね……、タンナさん?」

返事がないのを不思議に思ったヒールが、横を見てあっと声を漏らした。

「…寝ちゃってる…」

浅い寝息を立てるタンナを、じっと見つめる。呼吸に合わせて上下する肩、寝ている間も小さく震える羽根。
だらりと投げ出されたタンナの腕に恐る恐る手を伸ばしてみた。

「…………っ」

ぶわっ、と鱗粉が撒き散らされる。そのまま腕を組み、そっと寄りかかる。
幸せそうに微笑んだヒールは、そのまま眼前にある蛍光の幻想に心酔した。





空が白む。
死んだように静かだった森が、やがて少しずつ息吹きを取り戻していく。

(…そろそろ眠いなぁ)

名残惜しく、絡めていた腕を放す。早起きの小鳥の鳴き声に、ヒールは重たくなってきた目をこすった。

「タンナさん、もう朝ですよ」
「…ぅあ…?」

ゆさゆさと肩を揺らすと、寝呆けたタンナがゆっくりと目を開ける。ヒールと目が合うと、あ、と短く漏らした。

「ごめん…また寝ちゃった」
「いいんですよ。おはようございます」
「おはよう、ヒール」

既に山の端から顔を出していた朝日が、森に柔らかい光を落とし始めた。




















第一章 セイカツ



(それは、当たり前のことを当たり前にできる幸せ)

[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!